episode 015
観光地・熱海の高台に、ひとつの焙煎所が完成しました。
そのオーナーは、長年ブラジルで商社ビジネスに従事し、珈琲の生産地と深く関わってきたことから生まれたプロジェクト。現地の農園と直接つながるルートを持ち、自らの目と舌で選び抜いた高品質な生豆だけを輸入しています。そんなオーナーが、日本国内での焙煎拠点として選んだのがREMOX venti。こだわり抜いた豆にしっかりと向き合い、焙煎の香りとともに静かに過ごせる時間。そして、熱海という特別な場所で、全国に届けるコーヒーを焼き上げるための“日常の場所”としての焙煎所。その想いと条件に寄り添う空間として、REMOXで叶えました。
建築とデザイン
外観は、焼杉を思わせる木目調のサイディングと、木肌の表情をそのまま活かした塗装を施した杉の無垢板で構成。落ち着きと温もりが共存する仕上がりで、自然と調和しながらも、深い印象を残すファサードに仕上げられています。
室内には、天井全面に無垢の杉板を贅沢に使用。焙煎作業という“熱を扱う仕事”の中に、素材の持つやさしさと静けさが溶け込みます。壁はクロス仕上げを基本とし、焙煎機まわりにはキッチンパネルを採用。清掃性と耐熱性に配慮し、日々の作業に対応する設計です。床材には、リアルな木の質感を再現したフロアタイルを使用。見た目の自然さと、傷つきにくさ・メンテナンス性を両立し、長期的な運用にも対応しています。
建物を囲うように、約4.5畳のハードウッド製ウッドデッキを設置。室内からそのまま外へ出ると、眼前に広がるのは熱海の海の絶景。焙煎作業の合間に潮風を浴び、目線を遠くに預けることで、思考と呼吸が自然に整っていく、そんな余白が、この場所には備わっています。室内からも海は一望できますが、デッキに一歩出ることで、“見る”から“感じる”へと変わる体験が得られる。仕事と休息が、物理的にも感覚的にもシームレスにつながる設計です。
建設地は、熱海特有の車がすれ違えないような細く急な坂道の先。こうした敷地条件では通常の建築は困難ですが、現地施工型のREMOXだからこそ、柔軟に対応できました。